流量観測―川を流れる水の量はどうやって測る?―

河川を流れる水の量を知るための調査を「流量観測」と言います。

流量観測は洪水などの災害から地域を守る「治水」や、水を利用して暮らしに役立てる「利水」に欠かせない調査ですが、もちろん川を流れる水すべてをくみ上げて量を測るわけにはいきません。

今回は、利水社の創業当初からの事業でもある、この流量観測についてご紹介したいと思います。

 

流量観測は何に役立つ?

流量観測で得られるデータは、治水・利水計画のための最も基本的な資料となります。

例えば、大雨が降った際の川の流量がわかれば、堤防の建設などの防災対策に活かすことができ、ダム上流の流量がわかれば、放流する水の量の調整など管理に役立ちます(治水)。

また、川の平均的な流量がわかれば、水力発電で生み出せる電力を試算することもできます(利水)。

有効な対策や計画を立てるためには、1度の調査ではなく、定期的かつ長期間にわたってデータを蓄積していくことが重要なため、1年を通して、さらに何年にも渡って調査を行うことも少なくありません。

生活を脅かす災害に備え、水資源を適切に管理していく。流量観測は持続可能な社会づくりの鍵となる調査なのです。

 

流量観測の方法

河川の流量は直接計測することができないため、川の断面積と流速をかけて算出します。つまり、流量は「1秒の間に河川のある断面を通過する水の体積」ということになります。

流量(㎥/秒)=河川の断面積(㎡)×流速(m/秒)

実際の作業としては、川の断面をいくつかの区間に区切って流速と断面積を計測していきます(断面積は水深と計測間隔をもとに計算)。それぞれの区間の流量を算出してから、全てを足して全体の流量とします。

流量=ABCDE(各区間の流量の和)

さらに、特に災害への対策のためには、平常時(低水)の流量に加え、洪水時(高水)の流量を知る必要があるため、両方の観測を合わせて行っていきます。

平常時の流量を知る(低水流量観測)

河川の流れが比較的穏やかな時、即ち普段の流量の観測を、「低水(ていすい)流量観測」と言います。

この観測は1年を通し、月数回のペースで行っていきます。

徒歩で川に入ったり、場合によっては舟などの上から、水深と流速を計測していくのですが、この時、水深は目盛りのついたロッド(棒)で計測し、流速は主に回転式流速計を用いて計測します。

回転式流速計は川の流れに合わせてプロペラが回り、設定した回転数に達したらブザーが鳴るという仕組み。一定時間内にブザーが何回鳴ったかを数えて流速を割り出します。

かなりアナログに思われるかもしれませんが、回転が目で見てわかるため信頼がおけるデータが取得できると、利水社の技術者は電磁式の流速計より好んで使っています。

回転式流速計(三映式流速計)

洪水時の流量を知る(高水流量観測)

一方、洪水時の流量の観測を「高水(たかみず)流量観測」と言います。さすがに大雨で水位が上がっている時に川に入るわけにはいかないため、「浮子(ふし)」という紙でできた棒を使った方法で流速を計測します。

橋などの上からこの浮子を川へ投下し、あらかじめ決めた区間を通過する時間をストップウォッチで計測して流速を求めていきます。浮子は一方に重りがついていて、川の中を立った状態で流れるように作られており、最終的には水に溶けるため、環境への負荷もありません。

断面積に関しては、高水の前後に浮子が通る箇所の川の測量(横断測量)を行って算出します。

高水流量観測の場合、できるだけ川の水位が高くなっているときの流量を知りたいため、タイミングの見極めが重要になります。もちろん安全には十分配慮し観測を行っています。

出典:中部建設協会「絵でみる水文観測」

水位流量曲線を作成する

流量は降雨量や川の水位の観測とは異なり、連続して把握することは困難です。

そこで、観測した流量とその時点の川の水位との関係を「水位流量曲線」というグラフにします。これを用いて水位から流量を算出し、災害予測や管理に役立てていきます。

より確かな水位流量曲線を作成するためには、現地調査で様々な水位に応じた流量を計測していることが大切になります。

 

以上のような方法で流量観測は行われ、そのデータは様々な用途に活用されていきます。

夏の暑い日も、冬の寒い日も、現地に赴いて行われる流量観測。地道な調査ですが、地域のみなさんの安全と暮らしを支えています。