水中測量最前線:ナローマルチビーム音響測深とは?

ナローマルチビーム音響測深とは?

ナローマルチビーム音響測深とは、多数の音波を用いて海や湖沼、河川などの水深を計測(測深)、水底の地形を把握する技術です。

従来の手法である「シングルビーム」による測深では、音響測深機から1本の音波のみを発射して計測していたため、調査範囲を何度も往復しなければならず、非常に時間がかかる上に、地形を全て網羅することは困難でした。

それに対し、ナローマルチビーム音響測深機は、「ナロー(細かい)マルチ(多数の)ビーム(音波)」を放射状に発することにより、複雑な地形や構造物も面的にとらえ、短時間・広範囲かつ正確に把握することができます。

利水社のナローマルチビーム音響測深の特徴

利水社の保有する機器(NORBIT WINGHEAD i77h)は、1024本のビームを一度に放射。最小0.5°という微小なビーム幅により高解像度の測深データを取得できます。

また計測範囲は最大210°。水面ぎりぎりまで計測できるうえ、ビームを放射する角度もソフト上で調整可能なため、例えば堤防の側面などを集中的に計測したい場合も、機器を一度下ろして角度を調整するといった手間を省き、効率的な調査を行うことができます。

ビーム幅0.9°(左)と0.5°(右)の比較イメージ

NORBIT WINGHEAD i77hの性能
最大スワス幅(計測範囲) 210°
ビーム幅 0.5°×0.9°(400kHz)、0.3°×0.5°(700kHz)
ビーム数 1024本
計測最大レンジ(計測可能水深) 300m

解析データを様々な図面に加工し提供

ナローマルチビーム音響測深によって取得された3次元の点群データを、深さによって色分けしたヒートマップや等深線図、任意の位置での断面図など、用途に見合った様々な図面に加工します。

グリッドデータからは水底の土量を算出することもできるため、ダム湖に堆積した土砂や港湾の浚渫範囲の把握なども容易となります。

3次元点群データ

断面データ

等深線データ

グリッドデータ

活用が期待される調査分野

ICT土工(起工測量、施工管理、出来形測量、点検、維持管理)、水路測量、ダム湖や河川の堆積土砂把握、護岸点検、漁場や人工漁礁付近の地形把握、沈船調査、ほか

ラジコンボートによる自動操縦が可能

利水社ではナローマルチビーム音響測深機専用のラジコンボート(Unmanned Surface Vehicle OTTER™)を導入。

こちらはリモコンによる操作のほか、プログラミングによる自動操縦も可能なため、船舶が航行できないような狭い入り江や浅い水域でも計測が可能。

運搬も車で行えるため、船舶をチャーターするようなコストも抑えることができます。

水部と陸部の地形を一度に計測

さらにラジコンボートにナローマルチビーム音響測深機とともに地上用のレーザスキャナを搭載すれば、水中の地形と共に、水際の地形や建物など構造物も3次元計測ができます。

地上部から水面下まで、継ぎ目のないシームレスなデータを一度の計測で取得しご提供します。

海の中でもまるでそこに水がないかのように見る・知ることができる技術、それがナローマルチビーム音響測深なのです。